悪徳事務所に契約してしまった失敗談
30代前半女性/宮城県仙台市在住
これは、私が一度目の探偵依頼で、ほぼ全額を失った話です。誰かを陥れたい意図はありません。同じ失敗を繰り返してほしくない、という願いだけで書きます。
※この記事は、実際によくある相談パターンをもとにしたケーススタディです。
焦りの一晩で、契約まで進んだ
夫の出張先のホテルで、明らかに「ひとり用」ではない持ち物がスーツケースから見えた、ある夜。それまで積み上げてきた違和感が、ついに確信に変わった。私は、その夜のうちにスマホで「探偵 浮気 即日対応」と打ち込んだ。
最上段に出てきたサイトを開き、フォームに状況を書いて送信した。翌朝には電話が来て、その日の夕方、都内の応接室に通された。
担当者は自信に満ちた口調で、こう言った。「今動かないと証拠が消えます」「今日中に契約していただければ30%オフです」「夜から動けます」。机のうえには、すでに契約書とペンが置かれていた。
胸の奥で警鐘が鳴った気もしたが、夫の出張は週末まで続いていた。「いま動かなければ間に合わない」——その焦りに押し切られて、私はサインをした。契約金額は約120万円。手付として半額をその場で振り込んだ。
追加費用が、次々に発生した
調査が始まって一週間。担当者から、最初の電話が来た。
「対象が新幹線で隣県まで移動したので、追加の交通費と機材費が発生します」「深夜帯にかかったので、深夜割増が必要です」「念のため土日も張り込んだほうがよさそうなので、追加プランをご案内します」
最初の見積もりに含まれていない名目の費用が、毎週のように積み上がっていった。気づけば、当初の120万円の契約は、200万円を超える総額に膨らんでいた。「これは、追加費用が発生する条件ですか?」と聞いても、「契約書の◯条に書いてあります」と返されるだけ。
実際に契約書を見直すと、確かに小さな文字で「移動・宿泊・機材等の実費は別途」と書いてあった。「実費」の解釈の幅が、想像以上に広く取られていることに、私はそこで初めて気づいた。
出てきた報告書は、想像以上にスカスカだった
調査開始から1ヶ月後、最初の報告書が手元に届いた。
開いた瞬間、頭が真っ白になった。
写真が3枚。時系列の記述が数行。場所の特定は曖昧。「対象人物は店舗Aに入店し、◯時に退店した」というレベルの記述が、淡々と並んでいるだけだった。
ホテル等への出入りを示す写真も、決定的な場面の連続性を示す記録も、ほとんどない。これでは、不貞行為の有無を客観的に示す材料には、ほぼなり得ない。
私は、担当者に問い合わせた。返ってきたのは、こんな返事だった。
「対象が警戒していて、決定的な場面が押さえられませんでした。さらに調査を継続するには、追加の期間と費用が必要です」
解約しようとしたら、違約金の壁
そこで、私はようやく我に返った。これは、もう先に進ませてはいけない契約だ、と。解約を申し入れた。
返ってきたのは、契約書の条項だった。「途中解約の場合、進行中の経費はすべて精算となります」「未着手分についても、所定の違約金が発生します」「すでに発生した実費は、返金対象外です」
電卓を叩いてみると、解約しても返ってくるお金はほぼゼロだった。契約のすべてが、依頼者にとって不利な条項で組み上がっていたことを、解約という出口になって初めて理解した。
私は、約220万円を支払い、内容のない報告書だけを手元に残して、その事務所との関係を終えた。
別の事務所で、ようやく状況が動いた
それから一ヶ月。私は別の事務所の無料相談に行った。今度は、届出番号がサイトの分かりやすい場所にあること、契約書に解約条項が明記されていること、報告書のサンプルを見せてもらえること、を最初に確認した。
そして、何より違ったのは、最初の相談で「ここまでの調査経緯と、それでも残っている材料の不足」を、丁寧に聞き取ってくれたことだった。担当者は、最初にこう言った。「前の事務所のことは何も言いません。ただ、ここから取り直す範囲を、できるだけ絞り込んだ設計にしましょう」
新しい依頼の総額は、約60万円。1ヶ月後に届いた報告書は、写真の枚数も時系列の記述も、最初の事務所のものとは比較にならない厚みがあった。私は、合計で280万円を支払って、ようやく必要な材料を手にした。
最初の事務所で、見抜けたはずのサイン
いま振り返ると、最初の事務所には、見抜けたはずのサインがいくつもあった。
届出番号の話が、契約段階でほとんど出なかった
重要事項説明が、書面ではなく口頭中心だった
契約を急がせる言葉が繰り返された
報告書のサンプルを「個人情報」を理由に提示しなかった
解約条項についての説明が一切なかった
追加費用の発生条件が、契約書の小さな文字に紛れていた
ひとつでも違和感があれば、その場で「一晩持ち帰らせてください」と言えていれば、私は220万円を救えていた。焦りの一晩が、年収以上の費用を吹き飛ばす——これが、事務所選びを誤ったときに起きる現実だった。
同じ失敗を、誰にもしてほしくない
この失敗から学んだことは、ひとつだけだ。
「即日対応」「今日だけ割引」「すぐ動かないと間に合わない」と言ってくる事務所は、それだけで候補から外す。
例外はない。本当に依頼者の利益を守ろうとする事務所であれば、依頼者が一晩考えることを否定しない。急がせる事務所が急がせる理由は、依頼者ではなく、自分たちの契約獲得のためだ、と理解しておくほうが安全だ。
そして、契約書は必ず、解約条項のページに付箋を貼ってから読む。追加費用の発生条件は、別紙でもらう。報告書のサンプルが見られない事務所には、依頼しない。このルールを、紙に書いて財布の中に入れておくくらいで、ちょうどいい。
私が支払った220万円は、戻ってこない。でも、その金額で買えた教訓を、誰かが読んで、自分の財布から払わずに済むなら、書く意味があった、と思いたい。焦りの一晩は、最大の敵だ。これだけは、繰り返してでも伝えておきたい。
Note
本記事は一般的な情報整理を目的としたもので、法的判断や個別の助言を行うものではありません。 違法な確認方法は避け、判断に迷う場合は弁護士・探偵事務所・消費生活相談窓口などの専門窓口へ確認してください。
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